0.注意
下記感想中、本作を含み以下の作品のネタバレを含みます。
自己責任でお願いします。
・君の名は。
・ほしのこえ
・雲のむこう、約束の場所
・秒速5センチメートル
また、本作「君の名は。」を既に鑑賞し、「十分に楽しめた、この作品大好きだ!」という方にとっては少し不愉快となるような内容となっている可能性がありますので、ご注意ください。
以下、まとまりのない感想です
1.感想
まず最初に一言で感想をまとめますと「とてもいい作品ではあったけれど、新海さんとしての新しさに欠ける作品だった」の一言に尽きてしまいます。
念のため先に言っておきますが、すごくいい作品ですよ。
それは間違いないです。
新海ファンはもちろんですが、特にこれまで新海さんの作品をちゃんと見たことがないという人には素直にオススメできますし、とても楽しめると思います。(まだご覧になっていないのにこの文章を読んでいるという希有な方、ぜひ、ぜひご覧ください)
新しさに欠けると言ったのは、本作で新海さんがやっていることってこれまでの自身の作品で全部やっていることなんですよね。
特殊な環境での遠距離恋愛、夢・記憶の喪失、すれ違い・・・などなど。
まぁ、それが新海さんのいい所であるし持ち味であるところは間違いないですし、僕はそんな新海さんの作品が大好きなわけですが。
なので、新海ファンも間違いなく楽しむことはできるでしょうし、事実僕は楽しかったです。
ただ、欲を言えば、もっと新しさが欲しかった。
少し話がそれてしまうのですが、僕は本当にこの作品が楽しみで楽しみで極力前情報を頭の中に入れないように心がけていました。
具体的には、CMが始まったと思ったらすぐにチャンネルを変える、シンゴジラを見に行ったさいに劇場で予告編が流れはじめたら目を閉じて絶対に映像は見ない、神木君がでる番組は(泣く泣く)極力見ないなど・・・
とはいえ、ポスター等は見ていますし、全ての情報をカットすることは無理なので、断片的にでも頭の中に(不覚にも)入れてしまった情報は以下のようなものでした。
・パラレルワールドっぽい(ポスターから)
・彗星が関係してるっぽい(ポスターから)
・なんか男の子と女の子が入れ替わるらしい(予告編の音声から)
・なんかがんばらないと皆死んじゃうらしい(予告編の音声から)
・男の子と女の子はメッセージ交換はできるらしい。脳内の会話かな?(予告編の音声から)
と、まぁざっくりとこれくらいです。
で、新海誠ファンがこれらの情報をもとに「君の名は。」の話を想像した結果、できあがったものはおそらく「君の名は。」の大筋のストーリーとブレナイと思います。
まぁ、どんでん返しがあるわけでもないので、「彗星が落ちてきてやばそうだから二人でがんばるんだろうな」ぐらいには予想できると思います。
それと予告編で「皆しんじゃう!」って女の子が叫んでるセリフがあるところから、なんとなくループものかタイムリープものだろうな~とは予想できてしまいますね。
と、まぁ見る前から大筋のストーリーは予想できてしまってその通りに物語は進行していきます。
それがよいか悪いかは微妙なところですが、少なくとも大どんでん返しを期待していたわけではないので、そこまで悪い要素ではないのかなともいます。
新海さんの大きな魅力として、演出面があると思っています。
言ってしまったら秒速5センチメートルも言の葉の庭もストーリー性にそこまで特殊性があるわけではありません。
主人公や主人公を取り巻く登場人物たちの人生を、美しい音楽と映像で色どり、そこにさらにいわゆる「新海節」と呼ばれるモノローグを付け加えることで、魅力的な新海誠の作品となっています。ざっくりと言えば、ですけれど。
そして本作「君の名は。」も当然新海さんらしさが爆発する演出で話が進んでいくわけですが、その全てに既視感があるのです。
そして要所要所で薄味に感じてしまうのです。
新海誠作品なのは間違いない・・・間違いないのに、なんかたりない・・・
とくにあれなのが、3年前のみつはと現代の瀧の世界がシンクロするという超超超大事な見せ場場面・・・
まんま「雲のむこう、約束の場所」じゃねーか!!!
と、心の中で叫んだのです。
うん・・・さすがにあれは、ちょっとな・・・ってなってしまいました。
「雲のむこう、約束の場所」と「秒速5センチメートル」を特に愛する自分としては突っ込まざるをえませんでした。
「パラレルワールド」、「夢」、「記憶」というテーマは完全に「雲のむこう、約束の場所」でやってるところなんですよね。
さらに言えば「雲のむこう、約束の場所は」はその夢とかパラレルワールド的な部分にフォーカスを当てて注力を注いでいる作品なので、そういった部分は完全に「君の名は。」は薄味だと感じてしまう。(「君の名は。」はパラレルワールドではないですけど、時間軸が違うという点ではパラレルワールドと類似していますよね)
また、これは言うまでもありませんが「遠距離恋愛」だったり「すれ違い」というテーマは新海さんはもうそれこそ「ほしのこえ」からずっとやっていることなので、「あ~またか~」となる。それは別に良い。
ただ、それにしたって「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」、それぞれ共通して主人公とヒロインとの距離が重要となっている作品ですが、描き方が全然違うので「あ~またか~」とはなっても薄味とは感じないんですよね。
本作「君の名は。」がそういった部分でも薄味に感じてしまったのは、演出面が「秒速5センチメートル」を彷彿とさせるところや、端的に言ってしまえば「大衆性」がかなり強いという所だと思います。
万人受けする話になっている、といった方がわかりやすいかもしれない。
基本的にこれまでの新海さんの遠距離恋愛系の話って、すごい喪失感を伴うお話になっているんですよね。
対して本作は、良くも悪くもラストはわかりやすくハッピーエンドとなる。
とはいえ、それは期待したところなので僕個人としては嬉しかったです。
雲のむこう、約束の場所、星を追う子供、秒速5センチメートル、言の葉の庭と来て、今回のようなハッピーエンドに落ち着いてくれてよかったと素直に思います。
(あの流れで秒速5センチメートルみたいな終わり方になったら多分ブーイングだと思います・・・)
なのでこの作品は
(「ほしのこえ」+「雲のむこう、約束の場所」+「秒速5センチメートル」)÷3 + 大衆性
っていう印象を覚えました。
以上のことから、これまでの新海さんの作品をあまり知らない人は物凄く楽しめると思います。
とてもよくできていますから。
間違いなく、新海誠の集大成だと思います。
また、これまで新海さんがやってきたことのその全てが詰め込まれていて、新海誠ファンも楽しめる作品になっていることは間違いありません。
上で色々書いていて今更何言ってんだと思われるかもしれませんが、実際見ている最中に「これはもしかして新海さんからファンへの最大級のプレゼントなのでは・・・?」と思いながら見ていました。
ただ、一新海誠ファンとして欲を言えば、もっと新しいものを見せてほしかった、というのが僕の我がままです。
本作はもしかしたら新海さんにとってはこれまでで最大のハードルになるかもしれませんが、次回作も切に楽しみにしております。
とりあえず、劇場で見れる間にもう一度、二度見に行きたいと思います。